とある阿呆の随想録

阿呆の徒然なる日々

20年ぶりの雪

 腐敗した筆者がこの世界に生み落とされてもう20年と数カ月になるけれども、大阪で積雪を見たのは初めてである。

 この地では雪は降っても積もらない。それが、外に出てみると積もっていたのだ。歩くと「ぐっぐっぐっ」という雪を踏む音がした。すこし高ぶっていた。雪があるのだ。かまくらを建造できるほどは無いが、丸めて人に投擲しても有り余るほどにあった。

 夕方、雪も降りやみ、融けかかった雪。名も知らぬ者の手によって竣工し、静かに佇むミニ雪だるまを見た。万歳のポーズで微笑みをたたえ、なぜかその手には石がむんずと握られていた。筆者は思わず笑顔となった。

 あふれでる好奇心を抑えきれず、跪いた上で積雪を手に取り、その感触を確かめた。気付くと女子小学生が不安と疑念がないまぜになった表情でこちらを見ていた。手を払い、何事も起きなかったことにしてその場を後にした。