とある阿呆の随想録

阿呆の徒然なる日々

Eminem Houdini 歌詞全解説

# Eminem「Houdini」全歌詞とラインごとの解説

## [Skit: Paul Rosenberg]

Hey, Em, it’s Paul

Uh, I was listening to the album
Good fucking luck, you’re on your own*

解説:** 冒頭はエミネムの長年のマネージャー、ポール・ローゼンバーグのスキット(寸劇)です。電話メッセージのように「やあエム、ポールだ。アルバムを聴いてたよ。健闘を祈る、あとは自力で頑張れ」と言っています。これはアルバムの内容が過激すぎて「もう知らないよ」と冗談交じりに突き放すようなコメントです。ポールは実際にエミネムのアルバムにしばしば登場し、彼のやりすぎな内容に困惑するスキットを演じることで有名です。

## [Intro: Eminem]

Guess who’s back, back again?

Shady’s back, tell a friend
Guess who’s back? Guess who’s back? Guess who’s back? Guess who’s back?
Guess who’s back? Guess who’s back? Guess who’s back? (Haha)
Da-da-da, da, da, da, da, da, da
Da-da-da, da, da, da, da*

解説:** 「Guess who’s back...」は**2002年のヒット曲「Without Me」**の有名な一節を引用しています ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=,10))。*"Shady’s back, tell a friend"*(「シェイディが戻ってきた、友達に教えてやれ」)というラインは、エミネムの別名「スリム・シェイディ」が復活したことを示すフレーズです。ここではそのフレーズを繰り返し、さらに「ダダダ…」というのは"Without Me"のイントロのメロディ(コミカルな伴奏の口真似)を再現しています。笑い声の*(Haha)*も含め、**エミネムが自身の過去の曲を引用することで、かつてのシェイディ人格が戻ってきた**ことを暗示しています。このイントロ全体で「また俺が戻ってきたぞ」と宣言し、リスナーに注意喚起しています。

## [Verse 1: Eminem]

Well, look what the stork brung (What?)*

解説:** *“look what the stork brung”*(コウノトリが運んできたものを見てみろ)という表現は、西洋の子供向け伝承で「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」と説明する話に由来します ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=For%20centuries%2C%20the%20folklore%20of,%E2%80%9D))。つまり、「コウノトリが(赤ん坊を)運んできたよ、さてそれは…」という導入で、自分自身を赤ん坊に見立てています。ただし普通の赤ん坊ではなく、この後に**悪魔的な赤ん坊**であることを示唆します。また*(What?)*は後ろで誰か(あるいはエミネム自身)が合いの手的に発する言葉で、「今なんて言った?」と驚きを強調しています。

Little baby devil with the forked tongue*

解説:** *“Little baby devil”*は「小さな悪魔の赤ん坊」という表現で、前のラインの続きです。「コウノトリが運んできたもの」として、自分を**小悪魔のような赤ん坊**だと描写しています。*“forked tongue”*(二股に裂けた舌)はヘビや悪魔の典型的なイメージで、**嘘つきや裏切り者**を指す慣用表現「舌が二枚ある(forked tongue)」(英語で「二枚舌」)としても使われます。ここでは悪魔の特徴としての二股の舌を持つ赤ん坊という不気味なイメージで、自身の生まれながらの邪悪さや毒舌を誇張しています。エミネムは過去にも自分を「サタンの落とし子」(*Satan’s spawn*)と称したことがあり(例: 2004年の曲「Evil Deeds」) ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=For%20centuries%2C%20the%20folklore%20of,%E2%80%9D))、今回も自身を悪魔の子にたとえているのです。

And it’s stickin’ out, yeah, like a sore thumb*

解説:** *“stickin’ out... like a sore thumb”*はイディオムで、*“stick out like a sore thumb”*(痛む親指のように突き出て目立つ)という形で「周囲からひときわ目立つ」という意味です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,yeah%2C%20like%20a%20sore%20thumb))。ここでは前のラインの「二股の舌」が「ひどく目立って突き出ている」と述べています。「二股の舌を突き出している、そうさまるで痛い親指みたいにね」というニュアンスです。つまり**人目を引く異様な存在**であることを強調しています。また、前後の文脈で自分を悪魔の子と称しているため、「周りから浮いた存在(普通じゃない存在)」であることも表しています。

(Bleh) With a forehead that it grew horns from (Look)*

解説:** *(Bleh)*は悪魔的・気味の悪い効果音のような発声で、何かグロテスクなものを表現する時の声です。「ブレッ」といった吐き捨てるような音で雰囲気を出しています。続くライン*“With a forehead that it grew horns from”*(「そいつの額からは角が生えた」)で、悪魔の赤ん坊のイメージを完成させます。額から角が生えているというのは典型的な悪魔の外見で、前の「forked tongue(二股の舌)」と合わせて**悪魔そのもの**の描写です。エミネムは世間から自分がしばしば「悪魔のようだ」と言われてきたことを逆手に取り、**自分自身を文字通り悪魔のように描いて皮肉っている**のです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=The%20public%20have%20often%20made,an%20analogy%20which%20he%20embraces))。*(Look)*は「ほら(見てみろ)」という相手に注意を促す合いの手で、自分の姿を強調しています。

Still a white jerk (It’s him)*

解説:** *“Still a white jerk”*(相変わらず嫌な白人野郎だ)と言い、自身を卑下しつつ紹介しています。*jerk*は「嫌な奴」「バカ」といったスラングです。エミネムは白人ラッパーとして突出した存在でしたが、自分のことを**“white jerk”**と呼ぶことで、その**俗悪なキャラクター(スリム・シェイディ)を継続している**ことを示唆しています。「Still」から、昔からそうだったし今もそうだというニュアンスが伝わります。また後ろの*(It’s him)*は「そいつだ!」という声で、悪魔的な存在=エミネム本人であることを確認するようなものです。まるで「そう、例のあいつだよ」というように、周囲の人物が指差しているような演出で、**彼が戻ってきた“白い嫌な奴”だと周知させる**効果があります。

Pullin’ up in a Chrysler to the cypher with the Vics, Percs and a Bud Light shirt*

解説:** *“Pullin’ up in a Chrysler”*は「クライスラー(車)に乗ってやって来る」という意味です。**クライスラー**はデトロイトに本社のある米国車メーカーで、デトロイト出身のエミネムとのゆかりも感じさせます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Chrysler%20is%20motor%20company%20that,alive%20and%20continued%20to%20operate))。*“cypher”*(サイファー)はラッパー同士が車座になって即興でラップを披露し合う場のことです。無名時代のエミネムはしばしばサイファーに参加して腕を磨いていたので、その情景を描いています。「クライスラー車でサイファーの現場に乗りつける」というのは、**若き日のエミネム(白人の嫌な奴)が地下のラップバトルに現れる様子**を思い起こさせます。

続く*“with the Vics, Percs and a Bud Light shirt”*は「Vicodin(バイコディン)とPercocet(パーカセット)を携え、バドライトのシャツを着て」という意味です。**“Vics”**と**“Percs”**はそれぞれ鎮痛剤の**Vicodin**(ヒドロコドン系鎮痛薬) ([New Eminem’s Single “Houdini” – Lyrics | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/houdini-lyrics.html#:~:text=With%20a%20forehead%20that%20it,Haha))と**Percocet**(オキシコドン系鎮痛薬)の略称で、どちらもエミネムがかつて中毒になっていた処方薬です。つまり**薬キメた状態**でサイファーに来ている描写です。また**Bud Light**(バドライト)は米国のビール銘柄で、そのロゴの入ったシャツを着ていると述べています。酒と薬にまみれた格好でラップバトルに現れる様子から、**全盛期の乱れたライフスタイル**や無軌道ぶりを自嘲気味に表現しています。「相変わらずの白人野郎で、薬と酒まみれでラップ会場に乗り付ける」という自己紹介になっており、**昔から何も変わっていない俺**を強調するラインです。

Lyrical technician (Yeah), an electrician (Yeah)*

解説:** *“Lyrical technician”*(リリカル・テクニシャン)は「歌詞の職人」つまり**リリックの技術者**という意味で、自分の卓越したライム技術を誇っています。続く*“an electrician”*(電気技師)という単語と韻を踏んでいます(*technician* と *electrician* の韻)。ここで**自分を「電気技師」にたとえる巧みな言葉遊び**が始まります。後述の “light work” にかけた伏線で、電気技師=ライト(明かり)を扱う人、という連想です。「俺は歌詞の職人にして、言わば電気技師なんだ」と宣言し、*(Yeah)*と合いの手で強調しています。これは単なる肩書き遊びではなく、この後のラインで多重の意味を持つ仕掛けにつながっています。

Y’all light work (Haha)*

解説:** *“Y’all light work”*は直訳すると「お前らなんてちょろいもんだ」です。**“light work”**はスラングで「楽勝な相手・物事」を指します ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=He%20relates%20himself%20to%20an,easily%20handled%20or%20light%20work))。この一節全体では、エミネムは自分を「電気技師(electrician)」にたとえ、「お前らは*light work*だ」と言っています。ここには**三重の意味(トリプル・オンタンンドル)**が込められています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,ya%E2%80%99ll%20light%20work)):

1. **電気的な意味:** *light work* は文字通り「電気技師の仕事」で、電気技師(electrician)にかかる言葉遊びです。彼が「電気技師」と自称した流れで、「お前らは俺(電気技師)にとっての*light work*(電気の仕事)なんだ」と続けています。
2. **結果としての意味:** *light work* は「電気技師が働いた後、明かり(ライト)がつく仕事」という字面にも取れます。つまり「俺が手をつければ、お前ら(=暗かったもの)は光るようになる」というニュアンスで、**自分が相手を輝かせてやる/直してやる**とも解釈できます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=He%20relates%20himself%20to%20an,easily%20handled%20or%20light%20work))。
3. **スラングの意味:** *light work* は上述の通り「朝飯前、たやすいこと」という意味の俗語です。エミネムは**他のラッパーたちがお遊び程度の存在で、自分にとっては片手間で倒せる相手**だと示しています。

(Haha)*という笑い声の合いの手が入ることで、これらの巧みな掛け言葉が決まったことに対する自信と痛快さが表現されています。要するにエミネムは、**自分は卓越したスキルを持つテクニシャンであり、お前たち程度は容易く片づけられる(light work)**と豪語しているのです。

And I don’t gotta play pretend, it’s you I make believe (What?)*

解説:** *“I don’t gotta play pretend”*は「俺は演技をする必要はない」という意味です。エミネムは常に本音で勝負していて嘘偽りがないという主張とも取れます。続けて*“it’s you I make believe”*と言っていますが、ここは少しひねった構文です。*make believe* は「~を信じさせる」という意味にも、「ごっこ遊びをする(make-believe=空想)」という意味にも取れます。つまりこのラインは**二重の意味**を持っています:

  • 「俺は演じる必要はない。**信じ込ませるのはお前(=リスナー、他人)の方だ**」という解釈。自分は本物であり、本気でラップしているので演技ではない、一方で自分のリリックで相手を圧倒して信じさせてしまう、という意味合いです。
  • 「俺はお芝居なんてしなくていい。俺は**“make believe(ごっこ遊び)”**をやってるだけなんだから」という解釈もできます。つまり「演技をする必要はない、俺はただ空想の世界(フェイクの世界)で遊んでいるだけだ」と、自嘲気味に言っている可能性もあります。

(What?)*の合いの手が入っているのは、この微妙な言い回しに対して「あれはどういう意味だ?」と首をかしげる様子を演出しているのでしょう。エミネム特有の**言葉遊び(ダブルミーニング)**がここでも発揮されており、リスナーに考えさせるラインになっています。

And you know I’m here to stay ’cause me (Why?)*

解説:** *“I’m here to stay”*は「俺はこれからも居座る(引退や消えるつもりはない)」という意味の決まり文句です。つまりエミネムは**自分がまだまだ健在で、音楽シーンに居続ける**と宣言しています。その理由として*“’cause me”*と区切っていますが、これは文法的には「because **I** ...」と続くはずのところです。実際次のラインへつながる仕掛けになっており、*(Why?)*(「なんでだ?」)という問いかけが間に入っています。つまり「俺はこの場に居続けるつもりだ、だって俺自身が…(なぜだ?)」という流れで、**次の言葉遊びの導入**になっています。

If I was to ever take a leave (What?)*

解説:** *“take a leave”*は「休暇を取る」や「席を外す」、ここでは「**シーンから身を引く**」という意味合いです。「もし仮に俺が身を引くことがあるとしたら」と言っています。*(What?)*がまた挟まれており、「もし俺が去ることがあるとすれば…なんだって?」と聞き返す感じで緊張感を高めています。実はこの*leave*という言葉は次のラインで**巧妙なダジャレ**に使われます。

It would be aspirin’ to break a feve’ (Yeah)*

解説:** 一見意味を取りにくいラインですが、*“aspirin’ to break a feve’”*は発音上**“aspirin to break a fever”**(熱を下げるためのアスピリン)と同じ音になります。前のラインの*“take a leave”*は**鎮痛解熱剤の「Aleve(アリーヴ)」(イブプロフェン系市販薬)**を連想させます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Having%20said%20that%2C%20taking%20%E2%80%9Ca,for%20fevers%20such%20as%20aspirin))。つまり「俺がシーンを去る(take a leave)って?それは熱を下げるためのアスピリン(aspirin)みたいなもんだ」という高度な掛け言葉になっているのです。**要するに「俺が去るなんてあり得ない」という強調**です。

ここでさらに洒落が効いているのは、「熱を下げる」というフレーズが**Megan Thee Stallionのデビューミックステープ『Fever』**(フィーバー:熱)を暗示している点です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20ties%20in%20to%20the,Stallion%E2%80%99s%20debut%20mixtape%20from%202019)) ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Megan%20Thee%20Stallion%20is%20a,for%20up%20to%2022%20years))。つまり、「俺が休むとしたら、それは*Fever*(メーガンの作品)を壊す(break)ための薬を服用する時ぐらいだ」という含みがあります。実際には「俺が活動をやめる理由なんてない」と言っているのですが、言葉遊びで**Aleve(薬)**と**leave(去る)**をかけ、さらに**Fever(熱 / メーガンの作品)**とも絡めて次のラインにつなげています。*(Yeah)*は自信たっぷりに頷くような合いの手です。

If I was to ask for Megan Thee (What?)*

Stallion if she would collab with me*

Would I really have a shot at a feat? (Haha)*

解説:** ここでは有名女性ラッパーの**Megan Thee Stallion(メーガン・ジー・スタリオン)**が登場します。「もしメーガンにコラボしてくれって頼んだら、果たして*feat.*(フィーチャリング参加)のチャンスはあるかな?」というラインです ([What are your favorite houdini lyrics? : r/Eminem](https://www.reddit.com/r/Eminem/comments/1d6jz45/what_are_your_favorite_houdini_lyrics/#:~:text=,a%20shot%20at%20a%20feat))。*collab*は「コラボする」の略語、*feat.*は「客演(フィーチャリング)」のことです。

この部分には**言葉遊びと時事ネタ**が仕込まれています。*“have a shot at a feat”*は直訳すると「フィーチャーの機会を撃ち抜けるか(得ることができるか)」ですが、ここで*shot*(銃撃)という言葉が鍵です。メーガン・ジー・スタリオンは2020年に**ラッパーのトリー・レーンズに足を銃撃される事件**に遭いました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Megan%20Thee%20Stallion%20is%20a,for%20up%20to%2022%20years))。その事件を踏まえ、*shot at her feet*(彼女の足への発砲)と*“shot at a feat”*(客演の機会)をかけた**ダブル・エンタンドル(二重の意味)**になっています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=years))。つまり、「メーガンに客演頼んでも、(彼女の事件になぞらえて)**俺に客演の“射撃”チャンスなんて来ないだろう**よな」とブラックユーモアで言っているのです。

(Haha)*という笑いは、このブラックジョークがキマったことへの自嘲気味な笑いです。同時に実際のところエミネムほどの大物でも、メーガンとのコラボ実現は難しいかもしれないという**セルフパロディ**でもあります。「まあ無理だろうけどね(笑)」というニュアンスで、自身の思い付きの冗談を笑っています。

なお、エミネムは2021年の「Killer (Remix)」でメーガンのヒット曲「Body」のフレーズを取り入れたことがあり、逆にメーガンもリル・ナズ・Xの「DOLLA SIGN SLIME」で「Real Slim Shady」を引き合いに出すなど、互いに言及しあった経緯があります ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Previously%20on%20his%202021%20track%2C,Megan%E2%80%99s%202020%20hit%20song%2C%20Body)) ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Conversely%2C%20Megan%20shouted%20Em%20out,single%20%E2%80%9CThe%20Real%20Slim%20Shady%E2%80%9D))。そうした背景もあり、このラインでは彼女の名を出しつつ上記の**ダジャレを効かせたパンチライン**に仕立てています。

I don’t know, but I’m glad to be back like…*

解説:** *“I don’t know”*(さあどうだろうな)ととぼけた後、*“glad to be back”*(戻ってこれて嬉しい)と言っています。つまり「コラボのチャンスがあるかどうかはわからないけど、ともかく**また戻ってこれて嬉しい**」と締めくくっています。*“back like…”*と「~のように戻ってきた」と言いかけて文を途切れさせていますが、次のサビにつながる仕掛けです。**自分が戻ってきた様子をこれから魔法のように見せてやる**という含みで、次のフレーズへのタメを作っています。

## [Chorus: Eminem]

Abra-abracadabra (And for my last trick)*

I’m ’bout to reach in my bag, bruh (Like)*

Abra-abracadabra (And for my last trick, poof)*

Just like that and I’m back, bro*

解説:** *“Abra-abracadabra”*(アブラカタブラ)は手品師が使うお馴染みの呪文です。ここでは1982年の**スティーブ・ミラー・バンドのヒット曲「Abracadabra」**のサビをインターポレート(曲の一部を借用)しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20interpolates%20the%20chorus%20of,Miller%20Band%E2%80%99s%201982%20track%2C%20%E2%80%9CAbracadabra%E2%80%9D))。原曲では “I wanna reach out and grab ya” というフレーズがありますが、エミネムは自分の文脈に合わせて歌詞を少し変えています。

エミネムは「そして俺の最後の手品だ」と宣言し、*“reach in my bag”*と言っています。マジシャンが**帽子やバッグからウサギを取り出す**手品を連想させる表現で、*(poof)* は「ポンッ」という手品の煙のような効果音です。要するに、**「アブラカタブラ…はいこれでカムバックだ!」**と魔法のように自分が戻ってきたことを高らかに示しているのです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=%3E%20%20Abra,that%20and%20I%E2%80%99m%20back%2C%20bro))。実際、“Just like that I’m back”と歌っており、「ほーらこんな風に俺は戻ってきたぜ」という痛快な宣言になっています。

このサビ部分では魔術師ハリー・フーディーニの名にちなみ、**魔法(Abracadabra)をテーマにした語彙**が散りばめられています。*“for my last trick”*(俺の最後のトリックとして)は、エミネムが引退を仄めかすような宣伝をしてファンを驚かせた一連の流れへの言及でもあります ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=In%20April%202024%2C%20Eminem%20announced,At%20the%20end%20of%20the))。彼は曲のリリース前に「…and for my last trick!(そして俺の最後の手品だ!)」というメッセージをSNSに投稿し、この曲の発売を予告していました ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=shared%20an%20iMessage%20%20screenshot,6))。それを受けてのフレーズであり、「最後の手品」と言いながら実際にはこのように**派手に復活してみせる**という彼の遊び心が表れています。

また、“reach in my bag”にはスラングで「自分の得意分野に没頭する、本領発揮する」という意味もあり、彼が本気モードであることを示唆します ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=with%20the%20song%E2%80%99s%20title%2C%20named,focused))。総じて、このサビは**魔法の呪文を唱えて華麗にカムバックを果たすエミネム**というコンセプトを音楽的にも演出的にも示す部分です。

## [Verse 2: Eminem]

Now, back in the days of old me (When?)*

解説:** *“back in the days of old me”*は「昔の自分だった頃に遡ると」という意味です。*(Now,...)*と始まっているように、ここからエミネムは**自分の過去(若かった頃)の話**を始めます。 ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=In%20this%20song%2C%20Em%20is,rather%20than%20toning%20it%20down))にもあるように、この曲ではエミネムが「かつての自分=やりたい放題だった頃」に戻るというテーマがあり、ここで具体的にその頃を振り返っています。*(When?)*は「いつのことだって?」という聞き返しで、物語調で語り始める雰囲気を演出しています。

Right around the time I became a dope fiend (Oh)*

解説:** *“right around the time…”*は「ちょうど~の頃だ」と過去の時期を特定する言い回しです。*“dope fiend”*は「ドラッグ中毒者」という俗語です。*dope* は麻薬(特に大麻やヘロインなど)を指し、*fiend* は「中毒者、常習者」を意味します。つまり**「俺が薬物中毒者になっていた頃だ」**と言っています。エミネムは2000年代半ばに処方薬中毒でキャリアに支障をきたした時期がありました。その時期を指しているのでしょう。*(Oh)*は思い出したようなリアクションで、「ああ、あの頃ね」とでも言うような感じです。このラインで**当時の自分が薬漬けだった**ことをさらりと認め、次のラインで具体的な薬物名が出てきます。

Ate some codeine as a way of coping (Mm)*

解説:** *“codeine”*(コデイン)は鎮痛剤や咳止めに含まれるオピオイド系薬物です。*“ate some codeine”*は直訳すると「コデインを少し飲み込んだ(摂取した)」となりますが、つまり**コデイン系の薬(シロップなど)をキメていた**ことを意味します。*“as a way of coping”*は「対処法として」といった意味で、ストレスや問題に対処するために薬物に頼っていたことを示唆しています。**辛い現実から逃れるために薬に溺れていた**ということです。*(Mm)*は「うーん」と肯定するような相槌で、自嘲気味に当時を振り返っている感じを出しています。

Taste of opiates, case of O.E.*

解説:** *“opiates”*(オピエイト)は**アヘン系の薬物**全般を指します。コデインヒロポンなど、依存性のある鎮痛薬の総称です。*“taste of opiates”*は「オピエイトの味」と訳せますが、ここでは**オピオイドの快楽を味わうこと**を意味しています。続く*“case of O.E.”*ですが、**“O.E.”**は米国の麦芽酒**Olde English 800**(オールド・イングリッシュ)の略称です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,E))。*case*は「ケース一箱」という意味で、酒の単位を表しています。つまり**「オピオイドの味を覚え、オールドイングリッシュをケースで買い込んでいた」**という描写になります。

この短いフレーズで、エミネムが**薬漬け酒漬けだった当時の自堕落な様子**を凝縮して表現しています。韻としても「opiates」と「O.E.’s(オー・イー)」が音を響かせており、リズム的にも心地よく繋がっています。

Turned me into smiley face emoji (Woo)*

解説:** 直訳すると「俺をスマイリーフェイス絵文字に変えた」です。これは**比喩的表現**で、薬物と酒に溺れていた結果、「いつも笑顔の絵文字みたいな状態になっていた」という意味です。つまり**常にヘラヘラとハイになっていた**様子を指しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Woo))。エミネムはインタビューなどで、薬物中毒の終盤にはいつも朦朧としてニヤニヤ笑ってばかりいたと語っており、当時の映像クリップでも異様にハイテンションな様子が確認できます。*smiley face emoji*(ニコちゃんマークの絵文字)は丸くニコニコした顔で、エミネムは薬で太って顔が丸くなり、いつも笑っていた自分をそれになぞらえています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=When%20Eminem%20was%20on%20drugs%2C,this%20one%2C%20of%20this%20behavior))。

またMVではこのラインに合わせて彼の尻の近くにスマイリーフェイスのマークが現れるシーンがあり、**当時の自分がお尻の穴までスマイリーフェイスだった=性格が悪くても表面上はニコニコしていた**というブラックユーモアも表現されています。*(Woo)*は「ふぅー!」といった奇声で、ドラッグでハイになってテンションが上がっている感じを演出しています。

My shit may not be age-appropriate*

解説:** *“my shit”*はここでは「俺のやってること/作品」という意味のスラングです(直訳すれば「俺のクソ」ですが、口語で自分のものを指す言い方)。*“may not be age-appropriate”*は「年齢相応ではないかもしれない」という意味で、要するに**「俺の(音楽の)内容は年齢にふさわしくないかもしれない」**と言っています。これは**エミネムの歌詞がしばしば過激で下品であり、子供には不適切だ**という批判を踏まえたセルフコメントです。

実際エミネムの曲は常に「ペアレンタル・アドバイザリー(保護者要注意)」のレーティングが付くような過激な表現を含みますし、過去には若年層への悪影響が議論されたこともあります。ここではそれを逆手に取って「俺のやることは子供向けじゃないぜ」と開き直っているのです。

But I will hit an eight-year-old in the face with a participation trophy*

解説:** 直訳すると「でも俺は8歳児の顔を**参加賞のトロフィー**で殴りつけてやる」となります。一瞬ギョッとするような過激な内容ですが、これは**彼のブラックユーモアと社会風刺**が混ざったラインです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=The%20concept%20of%20a%20participation,and%20Gen%20Z%20were%20raised))。

まず、*“participation trophy”*(参加賞のトロフィー)とは、スポーツ大会などで単なる参加者にも与えられる賞品のことで、勝者でなくても子供がもらえる**ゆとり的な表彰**を指します。近年、勝敗に関係なく子供たちを褒める「参加賞文化」は、ミレニアル世代やZ世代が甘やかされて育った象徴として、年長世代から皮肉られることがあります ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=The%20concept%20of%20a%20participation,and%20Gen%20Z%20were%20raised))。

エミネムはここで**「自分の作品は子供には相応しくない」と言った直後に「8歳児の顔をトロフィーで殴る」**という極端な暴力ジョークを放り込んでいます。これは、「たとえ子供相手でも俺は遠慮しないし、今の若い世代(8歳児は極端ですが)の甘さを叩き直してやる」という過激な皮肉です。エミネムは以前から若い世代(特に自分に批判的なTikTok世代など)を揶揄する傾向があり ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Em%20has%20criticized%20younger%20generations,Facebook%20post%20sharing%20the%20video)) ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=%E2%80%9CGen%20Zers%20actin%E2%80%99%20like%20rap,how%20rap%E2%80%99s%20supposed%20to%20sound%E2%80%9D))、このラインも**現代の“過保護すぎる文化”への痛烈な批判**と受け取れます。

もちろん実際に子供を殴るわけではなく、ショッキングな表現でリスナーを驚かせる**スリム・シェイディ流のジョーク**です。参加賞トロフィーは「何もしなくても褒められる風潮」の象徴であり、それで子供を殴るというのは「そんな甘えはぶち壊してやる」という挑発でもあります。エミネムの**過激なユーモアと社会批評**が同居したラインと言えるでしょう。

‘Cause I have zero doubts

That this whole world’s ’bout
To turn into some girl scouts*

解説:** *“’cause I have zero doubts”*は前のラインからの続きで「なぜなら俺には1ミリの疑いもないからだ」という意味です。その内容とは「この世界全体がガールスカウト(Girl Scouts)になろうとしている」というものです。*“’bout to”*は*“about to”*の省略で「まさに~しようとしている」というニュアンス。直訳すると「世界全体がガールスカウトになろうとしているに違いない」となります。

ここで言う*“girl scouts”*は**ガールスカウト**(女の子のボーイスカウト組織)のことですが、エミネムはこれを「世界中みんなガールスカウトみたいにお行儀よくお菓子でも売るようになるだろうさ」という**皮肉**で使っています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20doubts%20that%20the%20world,politics%20or%20has%20become%20sluggish))。つまり**世の中全体が軟弱で善良ちゃんになってしまっている**という不満を表しています。エミネムは「近頃の世の中は気取った優等生ばかりで、何でもソフトになりすぎてる」と感じており、ここではそれを**「全員ガールスカウト化」**と表現したのです。

ガールスカウトは親切・礼儀・奉仕といった美徳を教えますが、エミネムの視点ではそれが**行き過ぎた「潔癖な社会」**に映っています。彼はこの曲全体で現代社会の“繊細すぎる風潮”や“検閲”を批判しており(後述の検閲局のラインにつながります)、この部分もその一環です。「まったく疑いようがない、**世界はすっかり腑抜けになっちまうぜ**」という挑発的な言い方で、リスナーに考えを突きつけています。

That censorship bureau’s out to (Shut me down)*

解説:** *“censorship bureau”*は直訳すれば「検閲局」です。つまり**自分を検閲しようとする連中**が動き出している、と言っています。*“out to ~”*は「~しようと企んでいる」という意味のフレーズです。ここでは*(Shut me down)*という合いの手が途中に入っていますが、これは**エミネムの2002年の曲「Without Me」**の歌詞を引用したものです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Sample%2Finterpolation%20of%20Without%20Me))。

"Without Me"の中で、*“So the FCC won’t let me be / or let me be me, so let me see / They tried to shut me down on MTV”*(だからFCC連邦通信委員会)は俺を放っておかない、MTVで俺を黙らせようとした)というラインがありました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=%E2%80%9CSo%20the%20FCC%20won%E2%80%99t%20let,feels%20so%20empty%20Without%20Me%E2%80%9D))。今回*(Shut me down)*と一瞬挿入されているのは、まさにそのフレーズへの言及です。FCC放送禁止用語などを取り締まる検閲機関ですが、現代ではSNSや世論が検閲者の役割を果たす場合もあります。

エミネムは「検閲局が俺を黙らせようとしている」と言い、すぐ*(Shut me down)*と引用を入れることで、**昔も今も変わらず自分は規制の対象だ**と示唆しています。 ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=also%20reference%20Eminem%27s%20controversy%20over,as%20to%20whether%20a%20collaboration))彼はキャリア初期から同性愛嫌悪的な歌詞などで批判・検閲を受けてきましたが、今の時代にそのままのスタイルでいればSNSなどで“キャンセル”されかねない状況です。このラインは、**当時MTVで放送禁止にされた自分と、今SNSで叩かれる自分を重ね合わせて**表現しています。

So when I started this verse

It did start off lighthearted at first (Hmm)*

解説:** 「だからこのヴァース(詩節)を始めたときは、最初は気楽な感じで始まったんだ」と言っています。実際、第2ヴァース冒頭はコミカルな薬物回顧や8歳児ジョークで、ある意味ふざけた調子でした。しかし途中からどんどん批判的・攻撃的な内容にシフトしてきたことを**自らメタ的に語っている**のです。*“lighthearted”*は「軽いノリの、深刻でない」という意味で、**出だしは軽い気持ちだった**と振り返っています。*(Hmm)*は考え込むような相槌で、「そう、最初は軽い感じだったよな…」と自分で頷いているようなニュアンスです。

要するに、このラインまででエミネムは怒りの対象(現代社会の風潮や検閲)について語り始めており、「当初は冗談半分だったのに、話しているうちに**だんだん本気モードになってきた**ぞ」という自己言及をしています。**曲の構成すらネタにしてしまう**のはエミネムのユーモアであり、リスナーに「ここからが本題だ」と注意を促す効果もあります。

But it feels like I’m targeted

Mind-bogglin’ how my profit has skyrocketed
Look what I pocketed*

解説:** ここでは韻を畳みかけながらエミネムの**驚異的な成功とそれに伴う批判**について語っています。

  • *“feels like I’m targeted”*(自分が標的にされているように感じる)というのは、**世間や批評家から攻撃の的にされている**という不満です。長年にわたり何かと非難を受けてきた彼の被害意識が表れています。実際、エミネムはキャリアを通じて過激な歌詞ゆえに批評の標的であり続けました。
  • *“Mind-bogglin’ how my profit has skyrocketed”*は「俺の稼ぎが急上昇したことは驚異的だ」という意味です。*mind-boggling*は「頭がクラクラするほど驚異的な」というニュアンスで、*profit*(利益)、*skyrocketed*(急騰した)と続けて、自分の**莫大な成功**を語っています。実際にエミネムは史上最も売れたヒップホップアーティストであり、総売上や資産が桁外れです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=As%20of%202023%2C%20Eminem%20is,to%20be%20an%20astounding%20%24250%2C000%2C000))。2020年代においても彼の純資産は2億5千万ドル以上と言われ、その数字の凄まじさを自ら「mind-boggling(常軌を逸している)」と表現しています。
  • *“Look what I pocketed”*は「俺がどれだけ懐に入れたか見てみろ」という意味です。*pocket*は動詞で「ポケットに入れる=稼ぐ・盗む」のような意味があります。「俺が稼ぎ出した額を見ろよ」と金銭的成功を強調しています。

これらのラインは韻を踏んでおり、*targeted*, *skyrocketed*, *pocketed*と畳み掛けることでリズムに勢いをつけています。一方で内容的には、「俺はとてつもない成功を収めて大金を得たが、そのせいで標的にもなっている」といった複雑な心境です。**成功による富と名声、しかし同時に批判にも晒されている**という、彼の立場をまとめた部分と言えます。

Yeah, the shit is just like y’all had been light joggin’, and*

I’ve been runnin’ at full speed*

And that’s why I’m ahead like my noggin’, and*

解説:** ここでは他のラッパーたちとの**努力やスピードの比較**を、運動にたとえて表現しています。

  • *“y’all had been light joggin’”*は「お前らはずっと軽くジョギングしてた程度だ」と言っています。つまり、同業の他の連中は**本気度が低く、ゆるゆるとやってきただけ**だという批判です。
  • それに対して*“I’ve been runnin’ at full speed”*(俺は全速力で走り続けてきた)と続け、自分は**全力疾走で努力し続けた**ことを強調しています。実際エミネムは長年にわたり精力的に作品を出し、大量の曲を書き、ラップスキルも研鑽し続けてきたことで知られます。ここではそのストイックさを自負しています。
  • *“that’s why I’m ahead like my noggin’”*は「だから俺は他より前にいる、まるで俺の**頭**(noggin)みたいにな」と締めています。*ahead*は「先んじて、前に」という意味で、*a head*(頭)との**駄洒落**になっています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,ahead%20like%20my%20noggin%20and))。*noggin’*は俗語で「頭」を指します。自分がトップに立っている(ahead)様子を、自分の頭(a head)が他の体から飛び出しているように描写することで、**「俺は一歩先を行っている」**ことをユーモラスに示しています。

要するに、**「お前らがジョギング程度の努力しかしてこなかった間に、俺は全力疾走してきた。だから俺の方が(頭一つ)先にいるんだ」**と言っているのです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=%E2%80%9CYeah%2C%20the%20shit%20is%20just,been%20runnin%E2%80%99%20at%20full%20speed%2C%E2%80%9D))。この箇所も韻が巧みで、*joggin’*, *speed*, *noggin’*と踏みながらメッセージ性も強いラインになっています。エミネムのキャリアの成功と他との差をひときわ際立たせる自己賛辞のパートです。

I’m the fight y’all get in

When you debate who the best, but opps, I’m white chalkin’ when
I step up to that mic, cock it then*

解説:** ここではエミネムが**ラップ界で特別な存在であること**を別の角度から主張しています。

  • *“I’m the fight y’all get in when you debate who the best”*は「お前たちが『誰が一番か』議論するときに起きる喧嘩の原因がこの俺だ」という意味です。つまり**「史上最高のラッパーは誰だ」という議論になると必ず俺の名前が出て論争になる**ということです。実際、エミネムは「ベストラッパー論争」で頻繁に言及される存在で、彼を挙げるファンも多い一方で異論も出て議論が白熱します。その様子を「俺という存在自体が、お前らを喧嘩させるんだ」と表現しています。自分が**ラップゲームにおける指標**であり、避けて通れない存在だという自負が感じられます。
  • *“opps, I’m white chalkin’ when I step up to that mic, cock it then”*は少し難解ですが、*opps*は*oppositions*(敵・対戦相手)の略語です。また*white chalk*は**「白いチョークで線を引く」**ことを指し、これは**殺人事件などで死体の周りにチョークでアウトラインを描く**イメージです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=At%20the%20scene%20of%20a,2020%20track%2C%20%E2%80%9CLock%20It%20Up%E2%80%9D))。つまり*“I’m white chalkin’”*とは、「俺が(マイクを手に)立てば相手は死体同然で、現場に白線が引かれる羽目になる」という**殺し文句**です。エミネムは過去にもマイクを武器(銃火器)にたとえて「マイクを手にした俺は殺傷力を持つ」といったリリックを数多く書いています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=traditional%20way%20of%20preserving%20evidence,2020%20track%2C%20%E2%80%9CLock%20It%20Up%E2%80%9D))。ここでもマイクを握る動作を*“cock it”*(銃をコックする=弾を込める/撃鉄を起こす)という語で表現し、自分がマイクを持てば**相手を殺してしまう(=ラップバトルで圧勝する)**という意味を込めています。

まとめると、「誰が一番か議論になるといつも俺が因縁のもとだし、俺がマイクを握れば(銃を構えれば)お前ら敵対者はチョークで輪郭描かれる(死んだも同然)なんだよ」という非常に挑発的なラインです。エミネムの**バトルラップ的な誇張表現**であり、彼が依然として最強のMCだと宣言する痛快なくだりです。

"Oh my God, it’s him! Not again!"*

解説:** これはセリフ調になっており、*“Oh my God, it’s him! Not again!”*(「お前まさか…あいつか!またかよ!」)という叫びです。誰かがエミネム(または彼の alter ego であるスリム・シェイディ)を見て驚き呆れている様子を演じています。

このラインは**エミネム自身の過去曲へのセルフオマージュ**になっています。1999年の曲「As the World Turns」で、女性がエミネムに向かって *“Oh my God, it’s you, not again!”*(「ああ神様、あんたなの?もう勘弁して!」)と叫ぶ場面がありました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,him%21%20Not%20again%21%E2%80%9D))。今回それに似たフレーズを持ち出すことで、**往年のスリム・シェイディ節が戻ってきた**ことを示唆しています。

意味としては、ここまで暴れまわるようなリリックを展開してきたので周囲(世間)が「うわ、またあいつがやらかしてるよ…」とうんざりしている様子を戯画化したものです。**エミネムが再び騒動を起こす存在として帰ってきた**ことをユーモラスに表現し、同時に昔の自分の曲を知るファンにはニヤリとさせるセルフ引用となっています。

## [Chorus: Eminem]

(繰り返し)* *Abra-abracadabra (And for my last trick)... Just like that and I’m back, bro (Break it down)*

解説:** 2回目のサビが繰り返されます。内容は前述のとおり**魔法の呪文で華麗にカムバックを決める**というもので、最後に*(Break it down)*という掛け声が追加されています。*“break it down”*は「(曲を)ブレイクダウンせよ、説明してみろ」という煽りで、この後のブリッジ部分へのつなぎです。

## [Bridge: Eminem]

Sometimes, I wonder what the old me’d say (If what?)*

解説:** *“I wonder what the old me’d say”*は「昔の自分なら何て言うかなと時々思う」という意味です。ここで言う “old me” は**若い頃の自分(スリム・シェイディ全盛期の自分)**を指しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20has%20a%20long%20history,particularly%20The%20Marshall%20Mathers%20LP))。つまりエミネムは、**今の世の中を昔の自分が見たらどう思うか**と想像しているのです。*(If what?)*は「何だって?」と問い返す相槌で、次のラインに繋げています。

If he could see the way shit is today (Look at this shit, man)*

解説:** *“the way shit is today”*は「今日のこのクソみたいな有様」とでも訳せますが、要は**「今の世の中の状況」**を指しています。「もし昔の俺が今の世の中を目にしたら」と条件節で述べています。*(Look at this shit, man)*は「見てみろよ、このざまを」と、実際に昔の自分に語りかけるような相槌です。

ここまでで「昔の自分なら、今の窮屈で綺麗事ばかりの世の中を見て何て言うだろう?」という趣旨になっています。エミネムはかつて非常に過激でアンチ社会的なリリックを書いていたため、**もしあの頃の自分が2020年代のポリコレやキャンセルカルチャーの時代に放り込まれたら…**という仮定をしています。

He’d probably say that everything is gay (Like happy)*

解説:** *“He’d probably say that everything is gay”*(そいつ(昔の俺)なら多分「何もかもゲイだ」と言うだろう)という非常に挑発的なラインです。ここで使われている *“gay”* は二重の意味を持っています。

一つ目は**「ゲイ(同性愛者)」**という本来の意味。もう一つは、エミネムが若い頃によく使っていたスラングで、**「つまらない、ダサい、気に入らない」**といった否定的な意味です。当時は若者言葉として「that’s gay(それゲイだね)」=「それ最悪だね」というような使い方が一般的に存在しました。しかし現在ではこの用法は同性愛者差別だとして批判されます。

エミネムはキャリア初期から同性愛を侮辱するような言葉(faggotやgayのネガティブ用法)を頻繁に使って批判を浴びてきました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20has%20a%20long%20history,particularly%20The%20Marshall%20Mathers%20LP))。ここではそれを踏まえて、「昔の俺なら今の世の中を見て『何もかも*gay*だ(くだらねえ)』とか言いかねないだろ?」と半ば挑発的に言っています。そしてすかさず*(Like happy)*と付け足しています。この*(Like happy)*は、「*gay*には『陽気な、楽しげな』という本来の意味もあるよ」という注釈のようにも聞こえます。**1950年代以前は“gay”は「陽気な」という意味で使われていた**ため ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=The%20term%20%E2%80%9Cgay%E2%80%9D%20has%20two,as%20a%20synonym%20for%20happiness))、「昔の意味で言えば*happy*(ハッピー)ってことさ」とフォローしているわけです。

これは**皮肉と挑発**が入り混じった表現です。一見「昔の俺なら“何もかもゲイだ”と言っちゃうだろうな、まあ“ハッピーって意味だけどね”」と冗談めかしています。しかし同時に、現代社会への風刺(なんでもかんでも叩かれる窮屈さ)も込めています。「今そんな発言をしたら大問題になる」ことを知りつつ、あえてギリギリのラインを突いているのです ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=also%20reference%20Eminem%27s%20controversy%20over,99%2C%20fantasize%20about%20hitting%20an))

エルトン・ジョンのようにエミネムを擁護してきたゲイの友人もいますが ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20has%20a%20long%20history,particularly%20The%20Marshall%20Mathers%20LP))、彼自身は「自分は同性愛者を指して言ってるんじゃない、“弱っちいヤツ”を指してgayと言ってるだけだ」と説明したこともあります。しかしこのラインでは、その言い訳すらも茶化し、「like happy(陽気って意味でね)」と開き直って笑い飛ばしているようにも感じられます。**シニカルなセルフパロディであり、同時に昔の自分の問題発言すらネタにする度胸**を見せつけています。

What’s my name? What’s my name? (Slim Shady)*

解説:** ここで唐突に「俺の名は?俺の名は?」と問いかけ、*(Slim Shady)*と自ら答えています。これは**1999年の代表曲「My Name Is」**を思い起こさせるフレーズです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Slim%20Shady))。「My Name Is」のサビでは “Hi! My name is… (what?) My name is… (who?) My name is… Slim Shady!” という自己紹介ラップが印象的でした。今回も「俺の名前は?(観客に言わせる)…スリム・シェイディ!」というコール&レスポンスの形で、自身の** alter egoである「スリム・シェイディ」が完全に復活した**ことを宣言しています。

ブリッジ全体を通じて、昔の自分(スリム・シェイディ)が現代を見ても相変わらず過激なことを言うだろうという流れから、このラインで「俺の名は…スリム・シェイディ!」と締めくくることで、**古き悪童キャラの降臨**を高らかに宣言しています。まさに曲名「Houdini」にふさわしく、20年前のスリム・シェイディ人格を魔法のように呼び出してみせたブリッジだと言えます。

## [Verse 3: Eminem]

So how many little kids still wanna act like me? (Haha)*

解説:** *“how many little kids still wanna act like me?”*(今でも何人の子供が俺の真似をしたがるんだ?)というラインは、エミネムの過去の歌詞を踏まえています。2000年のヒット曲「The Real Slim Shady」では、有名な一節で *“And there's a million of us just like me... who just don't give a f**k like me...”* と**自分の模倣者が大勢いる**ことを皮肉っていました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20is%20a%20callback%20to,2000%E2%80%99s%20%E2%80%9CThe%20Real%20Slim%20Shady%E2%80%9D))。また「My Name Is」の歌詞でも子供に悪影響を与える内容を歌っており ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=specifically%20for%20children%3A))、当時エミネムの型破りなスタイルに憧れて真似する若者が社会問題視されたこともありました。

ここで「今でもなお、俺みたいに振る舞いたがる子供が何人いるかな?」と問いかけることで、**かつて多くのフォロワー(エミネムの真似をする者)が現れたが、今の時代にそれをやりたい子はどれだけいるだろうか**と挑発しています。「Haha」の笑いは、おそらく**昔ほどはいないだろうし、いたらいたで大変だろうな**という皮肉な笑いでしょう。年数が経ち、自分のような過激なキャラは時代遅れだと揶揄する一方で、それでも**自分の影響力は無視できない**というニュアンスも込めています。

I’m a bigger prick than cacti be (Yeah)*

解説:** *“prick”*は「嫌な奴、クソ野郎」という俗語ですが、同時に「とげ」という意味もあります。*cacti*は「サボテン」の複数形で、サボテンは棘だらけの植物です。*“bigger prick than cacti be”*は直訳すると「俺はサボテンなんかよりもっとデカい棘(嫌な奴)だぜ」となります。これは**ダジャレ**で、サボテンの物理的な棘(prick)と、人を罵る言葉のprickを掛けています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,What))。要するに「俺はサボテン以上にトゲトゲしい嫌な奴だ」と豪語しているわけです。

(Yeah)*は自信たっぷりに肯定する相槌です。このラインで**自分がどれだけ嫌われ者であるか**を誇張しています。サボテン以上のトゲ=周囲を刺しまくる性格、という自己評価は、まさにスリム・シェイディ的な**傲慢さとユーモア**です。

And that’s why these (What?)*

解説:** *“that’s why these...”*と途中で切れており、「だからこそこれらの~」と続けようとしています。後ろの*(What?)*は「何がだって?」と合いの手で、次のラインに繋がります。つまり「俺は超トゲトゲの嫌な奴だ。だから~」と来て、一拍おいています。これは**次のラインへの溜め**であり、リスナーの注意を引く役割です。

実際次につながるのは "words sting..." というフレーズなので、おそらく *“that’s why these [words sting]...”* と言いたかったことが分かります。わざと "these" の後で切って*(What?)*と挟むことで、**リスナーに「何が何だ?」と思わせつつ韻を調整**しています。音的にも *these* と *bees*(次行の語尾)を響かせる効果があります。

Words sting just like you were being attacked by bees (Bzz)*

解説:** 先ほど区切った部分を受けて、*“words sting just like you were being attacked by bees”*(俺の言葉はまるでハチに襲われているかのように刺す)と言い切ります。これは前のサボテンの棘と掛けた表現です。サボテンの棘(prick)で刺す→言葉が刺す、という流れになっています。**エミネムの言葉(リリック)が人の心に刺さる痛み**を、ハチに刺される痛みにたとえているのです。

(Bzz)*はハチの羽音の擬音で、**ハチの大群に襲われるような様子**を音で表現しています。エミネムは自身の攻撃的な歌詞によって多くの人々を怒らせたり傷つけたりしてきました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20is%20saying%20that%20the,when%20engaging%20in%20public%20beefs))。それを自認した上で、「俺の言葉は蜂の一刺しみたいに痛かろう?」と不敵に言い放っているのです。

このラインも韻が効いており、*be (Yeah)*, *bees (Bzz)*と音を揃えています。意味的には、「俺がトゲのある奴だから、俺の言葉も刺々しいのさ」ということで、第3ヴァース冒頭からの流れで**自分の過激さとそれによる効果**を鮮やかにまとめています。

In the coupe, leaning back my seat (What?)*

解説:** *“coupe”*(クーペ)は2ドアの乗用車のことです。高級車で2ドアのスポーツタイプを指すこともあります。*“leaning back my seat”*は「シートを倒してもたれている」状態です。つまり**車の中でシートを倒してリラックスしている**描写です。第3ヴァースでは、ここからエミネムがまた悪ふざけモードに入っており、車の中であるイタズラをしています。

(What?)*は「ん?何をしてるんだ?」と続きを促す相槌です。この後に出てくる名前に繋がるので、そのちょっとしたタメになっています。

Bumpin’ R. Kelly’s favorite group (Uh), the black guy (Guy) pees (Pees, haha)*

解説:** ここは非常にブラックなジョークです。*“bumpin’”*は「(音楽を)大音量でかけている」という意味の俗語です。つまり「R・ケリーのお気に入りのグループを車でガンガン流している」と言っています。その「お気に入りのグループ」とは何か?次に*(Uh)*と一呼吸おいて、*“the black guy pees”*と畳みかけます。これは音的には**“The Black Eyed Peas”**(ブラック・アイド・ピーズ)という有名ヒップホップグループの名前と同じに聞こえます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20employs%20a%20reference%20to,Kelly%E2%80%99s%202002%20case))。

しかしここではスペル的には *“black guy pees”*(黒人男性がおしっこをする)となっており、**R・ケリーが関与したスキャンダル**を揶揄しています。R・ケリーは1990年代~2000年代に活躍したR&B歌手ですが、**未成年への性的虐待事件**で悪名高い人物です。特に2002年には14歳の少女に放尿する様子を収めたビデオが流出し大騒動になりました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Kelly%20has%20a%20long%20history,on%20all%20counts%20in%202008))。結局彼は2008年にその件では無罪になりましたが、それ以降も度重なる性的暴行疑惑で2021年に有罪判決を受けています。

エミネムは以前から曲中でR・ケリーを皮肉ってきましたが ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20has%20fired%20shots%20at,%E2%80%9D))、ここでも**「R・ケリーの好きなグループ?それはブラック・アイド・ピーズじゃなくて『ブラックの男がおしっこする(black guy pees)』ことだろうよ」**と最低のダジャレでディスっています。ブラック・アイド・ピーズ(The Black Eyed Peas)は実在のグループ(「ガット・フェーリン」などのヒット曲で有名)ですが、その名前をもじって「black guy pees(黒人男性がおしっこする)」に変え、R・ケリーのスキャンダルを指しているのです ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=The%20lyrics%20reference%20Harry%20Houdini,homophobic%20lyrics%20in%20his%20earlier))

(Uh)*や*(haha)*の合いの手は、この放送禁止スレスレのジョークに対する照れ隠しやおどけた調子を演出しています。**非常に際どい下ネタと社会的風刺**が融合したラインで、エミネム流の痛烈な有名人ディスです。

In my Air Max 90s

White Ts, walkin’ parental advisory*

解説:** *“Air Max 90s”*はナイキの有名なスニーカー「エアマックス90」のことです。*“White T’s”*は「白いTシャツ」。つまり**「エアマックス90を履いて、白Tシャツを着て」**という身なりの描写です。これは**エミネムの初期スタイル**そのもので、90年代末~2000年代初頭の彼と言えば白Tにバギーパンツ、スニーカー姿が定番でした ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,parental%20advisory))。ここで再びその格好をすることで、**往年のスリム・シェイディになりきっている**ことを示しています。

“walkin’ parental advisory”*は直訳すると「歩くペアレンタルアドバイザリー(保護者注意)」です。**“Parental Advisory”**とはExplicit Content(過激な内容)を含むCDに貼られる警告ステッカーのことで、エミネムのアルバムには必ず貼られていました。*walkin’ ~~*とすると「歩く○○」つまり「生きた○○」という意味の比喩になります。この場合**「歩く18禁マーク」**といったところです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,parental%20advisory))。自分自身の存在がすでに有害指定みたいなものだ、と自虐と誇張を込めて言っています。

要するに、「格好は昔のまんま白Tとエアマックス。俺自身が歩く18禁指定だ」と宣言しており、**見た目から中身まで昔のシェイディそのまま**だというアピールです。世間体などお構いなしで下品なことを撒き散らす存在、それが俺だ、と胸を張っています。

My transgender cat’s Siamese (Why?)*

解説:** 突飛なラインです。「俺のトランスジェンダーの猫はシャム猫だ」という意味になります。*Siamese*はシャム猫、つまりタイ原産の薄い毛色に黒っぽいポイント(顔や耳などが濃い色)の入った猫種です。ここでは「俺の猫はトランスジェンダーだ」という冗談から始まっています。

(Why?)*と合いの手が入っているのは、「なぜそんなことを言うのか?」と疑問を呈している形です。実際次のラインでその奇妙な発言の“理由”が語られます。

このラインは非常に政治的に不適切にも思える内容で、**意図的に炎上しそうなネタ**をぶっこんでいます。エミネムLGBT関連の話題で物議を醸してきましたが、ここでは**「自分の飼い猫が性転換している」と突拍子もないこと**を言い出し、リスナーを唖然とさせます。

なお、Siamese(シャム猫)という言葉も次に出る “Chinese” と韻を踏ませるための要素です。またシャム猫はアジア(旧名シャム=タイ)原産であることから、後の「中国人っぽくふるまう」との関連もあります。

Identifies as black, but acts Chinese (Haha)*

解説:** ここで前のラインの理由が明かされます。「(その猫は)自分のことを黒人だと認識しているのに、中国人のように振る舞うんだ」と言っています。つまり**猫が自分の“人種”を勘違いしている**というむちゃくちゃな設定です。

これは2019年にデイブ・シャペルスタンドアップコメディ「Sticks & Stones」で語ったジョークへのオマージュだと考えられます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20lyric%20is%20seemingly%20inspired,ancestry%20or%20societally%20assigned%20identity))。シャペルは「もし自分(黒人男性)が“トランス人種”で自分を中国人だと思い込んでいたらどうなるか」という皮肉を言いました。エミネムはそのネタを発展させ、**「自分の猫がトランスジェンダーで、人種的には黒人だと自己認識しているが、振る舞いは中国人っぽい」**というあり得ない状況を描いています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20lyric%20is%20seemingly%20inspired,ancestry%20or%20societally%20assigned%20identity))。

このラインはトランスジェンダーや人種の問題をごちゃまぜにした非常に際どいジョークです。現代のポリコレ的には完全アウトな内容ですが、それをあえてやることで**旧来のスリム・シェイディの攻撃性**を示しています。*“identifies as ~”*という言い方は近年「~として自認している」というジェンダー論議などでよく使われる表現で、それを猫に当てはめている点もブラックユーモアです。

また、シャム猫自体がアジア(タイ)原産で顔などが黒っぽい毛色(黒人を連想?)であること、タイ(旧名シャム)が中国文化とも混同されやすいこと、さらにシャム猫はしばしば双生児(Siamese twins)を指す言葉遊びにも使われることなど、複数の要素が絡んでいます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=community%20consists%20of%20people%20who,ancestry%20or%20societally%20assigned%20identity))。しかし深読みしすぎるより、このラインは単に**「めちゃくちゃな設定を言ってみせて、聴衆を驚かせ笑わせる」**シェイディ的悪ふざけと見るのが良いでしょう。*(Haha)*も本人がこの不謹慎ジョークに笑っている様子です。

Like a motherfuckin’ Hacky Sack, I treat (What?)*

The whole world ’cause I got it at my feet (Yeah)*

解説:** *“Hacky Sack”*(ハッキーサック)は足でボール(お手玉のような袋)を地面に落とさないよう蹴り続ける遊びです。日本でいう「お手玉リフティング」やフットバッグとも呼ばれます。*“Like a motherfuckin’ Hacky Sack, I treat the whole world”*は「まるでクソったれなハッキーサックみたいに、この世界全体を扱っている」という意味です。*“got it at my feet”*(それを足元に持っている)と続けているので、**世界を自分の足元で弄んでいる**という豪胆な表現になります ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Yeah))。

つまりエミネムは、**「世界は俺の足元にあって、ハッキーサックの球のように蹴飛ばして遊べるくらい俺の掌中にある」**と言っているのです。これは彼の成功と影響力を誇示したラインです。*(Yeah)*は自信に満ちた肯定。

Hacky Sackのイメージから、「世界を足元に置いて好き放題する」という描写は、**自分が世界を支配するほどの存在だ**という誇張です。「世界が俺の足元にある(at my feet)」とは慣用的に「自分のものだ」という意味にも取れます。エミネムほどの成功者になれば、世界中どこでも歓迎され金も名声も思い通り、という自己イメージでしょう。ここまでの流れで散々社会批判をしてきましたが、結局**「俺は世界を手玉に取る存在だ」**という強烈な自負で締めくくっています。

How can I explain to you (What?)*

That even myself I’m a danger to? (Yeah)*

解説:** ここでは一転して**自虐的なニュアンス**が顔を出します。「どうしたら君に説明できるだろう?俺は自分自身にとってさえ危険な存在なんだということを」という意味です。

エミネムは**自己破壊衝動**や自身の別人格との戦いをこれまでも楽曲で描いてきました。*“even myself I’m a danger to”*というのは、「他人にとって危険なのはもちろん、自分自身にとっても危険だ」という意味で、**自分すら傷つけかねない**ことを示唆しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Slim%20Shady%20is%20known%20for,ego))。実際、薬物中毒で命を危険にさらした過去や、内なる悪魔(スリム・シェイディ)が自分の人生をメチャクチャにしかけたことなどを踏まえた発言でしょう。

(What?)*の合いの手は意表を突かれたような感じで、「自分自身にも危険?どういうことだ?」と思わせますが、*(Yeah)*で深刻に頷いています。**自分でも手に負えないくらいヤバい奴が自分の中にいる**、だから世界を相手にハッキーサックのようにできるが、その代償として自分も危うい、という自己矛盾を抱えているということです。**エミネムの内省**が垣間見えるラインであり、アルバムタイトル『The Death of Slim Shady』にも通じる「自分 vs. 自分(シェイディ)」の構図が示唆されています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=violence%20and%20morbidity%2C%20often%20in,ego))。

I hop on tracks like a kangaroo*

解説:** *“hop on tracks”*は「曲に飛び乗る」という意味で、よくフィーチャリングなどで他人の曲に参加する時などに使われる表現です。*kangaroo*(カンガルー)は飛び跳ねる動物として有名です。つまり**「俺はカンガルーみたいに(次々と)曲に飛び乗る」**と言っています。

これは彼の多作ぶりや、どんなビートにも飛び込んでいく積極性を言ったものです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,like%20a%20kangaroo))。カンガルーのジャンプ力になぞらえて、**精力的に曲を作りまくる様子**をユーモラスに表現しています。実際エミネムは2020年に2枚組アルバム『Music to Be Murdered By』を発表し一年で32曲もの新曲を出すなど、キャリア後半でも高い制作意欲を見せています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Kangaroos%20are%20known%20for%20jumping,32%20songs%20during%20the%20year))。そのことを自分で「カンガルーみたいにピョンピョン曲に飛び乗っちゃうんだよね」と茶化しているわけです。

And say a few things or two to anger you*

But fuck that, if I think that shit, I’ma say that shit*

解説:** ここでは**エミネムの挑発精神**が表れています。

要は、**「多少物議を醸す発言を敢えてしてきたけど、そんな計算とか関係ねぇ。思ったことは言う。それだけだ」**という宣言です。エミネム表現者としての矜持が感じられ、どれだけ非難されようとも自己検閲しないという強い意志を示しています。

Cancel me, what? Okay, that’s it*

解説:** *“Cancel me”*は「俺をキャンセルしろ(=社会的に抹殺しろ)」というフレーズです。**キャンセル・カルチャー**(cancel culture)とは、不適切な言動をした有名人などが世間からボイコットされたり仕事を失ったりする現象を指します。エミネムほどのビッグネームでも、近年は若い世代から過去の過激発言を掘り起こされ「エミネムをキャンセルしよう」という動きもSNSで見られました ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Em%20has%20criticized%20younger%20generations,Facebook%20post%20sharing%20the%20video))。

ここで彼は「俺をキャンセルしろだと?よし、わかった、それじゃあ…」と受けて立つ構えを見せています。*(What?)*は「キャンセルだって?冗談だろ?」というリアクション。そして*"Okay, that's it"*(ああそうかい、もう結構)と続きます。これは**開き直り**の表現で、「キャンセルしたきゃ勝手にしろよ」という投げやりさと、次に起こす行動への合図でもあります。

実際エミネムは、批判に対して謝罪するよりも「俺を気に入らないなら聞くな」という態度を取ることが多く、この曲でもそのスタンスを貫いています。**キャンセルなんてクソくらえ**という彼の反骨心が表れています。

Go ahead, Paul, quit, snake-ass prick*

解説:** ここで唐突にマネージャーのポールに話が飛びます。*“Go ahead, Paul, quit”*は「勝手にしろよポール、辞めちまえ」という挑発です。続けて*“snake-ass prick”*と罵っています。*snake-ass*は「蛇みたいな奴」という意味で、**裏切り者**や**陰険な奴**を指すスラングです。*prick*は先ほども出た「クソ野郎」。つまり**「裏切り者のクソ野郎」**とポールを呼んでいます。

ポール・ローゼンバーグは2017年に一時エミネムのマネージャーを辞めてDef JamのCEOに転身した経緯がありますが、2020年にまたエミネムのもとに戻っています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20calls%20back%20to%20the,intro%20of%20the%20song))。エミネムはそうした出来事を茶化して、もしまた辞めるつもりなら「どうぞ勝手に。サイテー野郎だな」と罵倒しているのです。ここまで散々社会を挑発して「キャンセル?上等だ」と言った流れで、**「おいポール、お前も辞めたいなら辞めろよ」と自暴自棄気味に絡んでいる**シーンです。最初のスキットで「お前一人で頑張れよ」と言ったポールへのアンサーのようにもなっています。

You male cross dresser (Haha), fake-ass bitch*

解説:** さらにポールへの罵倒が続きます。*“male cross dresser”*は「男の女装家」です。ポールを**女装趣味の男**呼ばわりして侮辱しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,ass%20bitch))。実際のポールにそんな趣味はないでしょうが、**根拠のない人格攻撃**をあえてすることで過激さをエスカレートさせています。*fake-ass bitch*は「イカサマ野郎(臆病者)」くらいの強い罵りです。

(Haha)*と笑いながら言っているのは、あえてあり得ない悪口で挑発している自覚があるからでしょう。**いくらなんでも言いすぎ**というラインを越えてみせて、「また叩かれるかもな、でも知るかよ?」という開き直った笑いです。このあたりは昔のアルバムにあったポールとのコント的やり取り(ポールが怒るスキットなど)を思い出させます。**身内すらネタにして罵倒する**ことで、もはや怖いもの無しの状態を演出しています。

And I’ll probably get shit for that (Watch)*

解説:** *“get shit for that”*は「そのことで文句を食らうだろう」という意味の表現です。「こんなこと言ったらたぶん非難轟々だろうな」と言っています。まさに直前にポールを“女装野郎”呼ばわりしたことで、トランスジェンダー差別だと批判されるだろう、という予測です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Watch))。*(Watch)*(見てろよ)と付け加えているのは、「ほら絶対叩かれるに決まってる」と皮肉交じりに言っている感じです。

ここで一瞬我に返ったように「いやー今の発言はさすがにヤバいかな」と認めているふうですが、その次にはさらに開き直ります。**問題発言だとわかっていてもやめられない**のがスリム・シェイディの業(カルマ)であり、彼はそれすらネタにしてしまっています。「きっとまた批判されるだろうけど…」とわざわざ言うことで、**批判ウェルカムな姿勢**を強調しています。

But you can all suck my dick, in fact*

解説:** そして出ましたお馴染みのフレーズ、*“suck my dick”*(俺の○○でもしゃぶってろ)です。**「文句がある奴は全員俺のアレをしゃぶれ」**つまり「くたばりやがれ」という最上級の侮辱表現で、エミネム(シェイディ)の決め台詞の一つです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,suck%20my%20dick%2C%20in%20fact))。*“in fact”*は「実際問題」とか「事実上ね」と付け足しており、「何なら本当にやりやがれ」と煽っています。

ここまでの流れで散々攻撃的なことを言い、案の定批判されるだろうな…と察知しつつ、結局**「批判者ども全員まとめて俺の○○でも咥えてな!」**とぶちまけるわけです。これは**スリム・シェイディの真骨頂**ともいえる態度で、初期の曲から頻出したフレーズです。世間や批評家への最高の悪態として繰り出し、**絶対に謝らない・屈しない**彼のプライドを示しています。

Fuck them, fuck Dre, fuck Jimmy, fuck me, fuck you*

解説:** ここは**“Fuck ___”**の畳みかけでリズムを作る痛快な箇所です。「あいつらもクソくらえ、ドレーもクソくらえ、ジミーも俺もお前もクソくらえ!」と叫んでいます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Jimmy%2C%20fuck%20me%2C%20fuck%20you))。**Dr. Dre**(ドクター・ドレー)はエミネムの発掘者でありプロデューサー、**Jimmy**は**Jimmy Iovine**(ジミー・アイオヴィーン)でインタースコープの重鎮、エミネムの成功に深く関わった人物です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=World%20famous%20producer%20Dr,hearing%20The%20Slim%20Shady%20EP))。

友人であり恩人でもあるドレーやジミーにまで“Fuck ___”とやるのは、**映画『8 Mile』のラストバトル**を彷彿とさせます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=This%20line%20is%20reminiscent%20of,the%202002%20film%2C%208%20Mile))。あのシーンでラビット(エミネムの役)は、「Fuck a Papa Doc, fuck a clock, fuck everybody, fuck y’all if you doubt me!(パパ・ドックも時計も全部クソくらえ、俺を疑う奴は全員くたばれ!)」とまくし立てました。今回もそれに近く、**自分も含めて全方位に喧嘩を売る**勢いです。

「Fuck me」まで入れているのは、**自虐も織り交ぜつつノリを最大限過激にしている**と言えます。自分を罵ることで他者から罵られる隙を無くす手法でもあり、究極的には「誰彼構わずFuckだ!」という破壊的なユーモアです。**怒りとカタルシスのピーク**であり、聞いている方も思わず笑ってしまう痛快な瞬間でしょう。

Fuck my own kids, they’re brats (Fuck ’em)*

解説:** さらにエスカレートして「自分の子供ですらクソくらえ、あいつらガキどもめ!」と言い放ちます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Fuck%20%E2%80%99em))。*“brats”*は「ガキども」「小生意気なクソガキ」という軽蔑語です。エミネムには実の娘Hailieと、養子にした娘Alaina、非嫡出子から養子にした子Stevieがいますが ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Eminem%20has%20three%20children%20%E2%80%93,to%20coincide%20with%20this%20lyric))、その**我が子たちに向かってさえFuckを連発**しています。

(Fuck ’em)*と自分で念を押すように言っており、「子供だろうが関係ねえ、ファックだファック!」というノリです。もちろん本気で子供を憎んでいるわけではなく、**自分以外の全員に毒づくくだりの延長**です。身内すら例外にしないことで、どこまでもタブーを破る姿勢を見せています。

実際この部分、ミュージックビデオでは娘たち(ハイリーとアレイナとスティービー)がカメオ出演しており、歌詞に合わせて「パパ何てこと言うの!」と憤る演技をしてみせます ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Fuck%20%E2%80%99em))。つまり彼ら家族ぐるみでこのジョークを内輪ネタにしているわけです。**愛情があるからこそ笑いにできる**領域とも言え、これもエミネム流の家族ネタのひねりです。

They can screw off (Yeah), them and you all (Uh)*

解説:** *“screw off”*は「消え失せろ」「どっか行け」というスラングです。「あいつら(自分の子供たち)は出て行けばいいんだ、あいつらもお前らもな」と言っています。*“them and you all”*(彼らもお前ら全員も)と続けていることから、**自分の子も含めて全員まとめて消え失せちまえ**というニュアンスです ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Uh))。*(Yeah)*と*(Uh)*の合いの手でリズミカルに畳みかけています。

このラインには言葉遊びも潜んでいます。*“you all”*の発音は *“y’all”*(ヤール)となり、米国では引越し用トラックのレンタル会社「U-Haul(ユー・ホール)」と同音です ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,Uh))。*screw off*(出て行け)と言っていることから、「お前らみんなU-Haul借りて出てけよ」という引越しネタにも引っ掛けている可能性があります。すなわち**「ガキども荷物まとめてさっさと家を出ろ、お前らもな!」**というようなニュアンスです。

ここまで来ると怒りというより**破れかぶれのコメディ**です。エミネムは自分も含め全員に「出て行け!」と怒鳴っているものの、その過激さが逆に笑いを誘います。**全方位ディスのクライマックス**を飾るラインです。

You too, Paul (Punk), got two balls

Big as RuPaul’s (Woah)*

解説:** ここで再びポール・ローゼンバーグに矛先が向きます。*“You too, Paul”*(お前もだぞ、ポール)と名指しし、*(Punk)*「このチンピラが」と罵ります。続けて*“got two balls big as RuPaul’s”*とありますが、これは**睾丸(balls)**の話です。

「お前もなポール、お前にはルポール並みにでかいキンタマが二つぶら下がってるだろ」と言っているのです。**RuPaul**(ルポール)とは世界的に有名なドラァグクイーン(女装パフォーマー)で、背が高い男性でもあります ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=in%20several%20skits%20by%20Eminem%2C,on%20his%202018%20album%20Kamikaze))。ルポールは男性としての身体的特徴(当然睾丸も含む)を持ちつつ女装で活躍しています。エミネムはそのルポールの名前を出しつつ、ポールの睾丸を比較するという**下品極まりないジョーク**を飛ばしました。

これは直前にポールを「女装野郎」と罵った流れの延長で、**「ポール、お前もルポール並みにタマがデカいな!(=女装趣味だな)」**とちゃかしているわけです。*(Woah)*は呆れるような合いの手で、自分で言っておいて「うわぁ」と引いているようにも取れます。

このラインもLGBT方面には不謹慎ですが、**語呂合わせと韻の妙**があります。*Paul’s* と *balls*、さらに *RuPaul’s* で三重に押韻しつつ、ポールとルポールという名前の類似も活かしています。 ([Houdini (Eminem song) - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Houdini_(Eminem_song)#:~:text=to%20be%20,identifies%20as))スリム・シェイディ節全開の品の無いラインですが、ここまで来ると清々しいほどです。

What you thought you saw ain’t what you saw (Nah)*

‘Cause you’re never gon’ see me*

解説:** ここはちょっと不思議な言い回しです。*“What you thought you saw ain’t what you saw”*は「お前が見たと思ったものは、実際には見たものじゃない」という感じで、**目の前の現実を信用するな**と言っています。*(Nah)*は「違うね」「そんなわけねえだろ」と否定する声。つまり「お前が見たと思ったものは実は見間違いだ、なぜなら…」と続けています。

“‘Cause you’re never gon’ see me”*(お前には絶対に俺の姿なんか見えやしないからさ)とあり、**まるで自身が姿を消してしまうかのよう**なことを言っています。これは曲タイトル「Houdini」に絡めた消失のテーマです。ハリー・フーディーニは脱出マジックや消失マジックで有名な奇術師でした。エミネムはここで**自分も幻影のように消えてみせる**というニュアンスを出しています。

また一方で、曲のプロモーション時に彼が引退を示唆するような発言をしてファンを驚かせた件にも触れています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=,you%E2%80%99re%20never%20gon%E2%80%99%20see%20me))。「お前が見たと思った引退の兆候は、実は違ったんだ。俺のことなんかもう見られないって?いや、それは誤解だ」という意味にも取れます。いずれにせよ、**エミネムは簡単には姿を消さない**、彼のトリックに騙されるな、といった含みがあります。

## [Verse 3 (続き): Eminem]

Caught sleepin’ and see the kidnappin’ never did happen*

Like Sherri Papini, Harry Houdini*

I vanish into thin air as I’m leavin’ like…*

解説:** いよいよ曲のエンディングに向けたラインです。かなり詰め込まれた言葉遊びになっています。

この部分全体で、エミネムは「俺という**“子供(kid)”の“ナッピング(nap=居眠り)”なんてものは初めから無かった**んだ。つまり俺は眠ってなんかいない(活動を止めていない)。それはシェリー・パピーニの誘拐事件みたいなもので、本当は起きてなかった出来事さ」と示唆しています ([Deciphering Eminem’s Tricks in the “Houdini” Single: Lyrics Breakdown | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/eminem-houdini-lyrics-annotation-genius.html#:~:text=Em%20invokes%20these%20figures%20known,he%20would%20never%20fall%20off))。さらに「俺はフーディーニのように姿を消すけど、それも手品に過ぎない」という含みがあります。*“vanish into thin air”*は「空中に消える(跡形もなく消える)」というイディオムです。

最後の*“as I’m leavin’ like…”*で途切れていますが、曲の終わり方として**突然フェードアウト**するような演出でしょう。実際曲の最後には再度サビの「Abracadabra」が繰り返され、魔法の呪文とともに曲が閉じます ([New Eminem’s Single “Houdini” – Lyrics | Eminem.Pro - the biggest and most trusted source of Eminem](https://eminem.news/houdini-lyrics.html#:~:text=%5BChorus%3A%20Eminem%5D%20Abra,that%20and%20I%E2%80%99m%20back%2C%20bro))。つまり「俺が去っていく様は、まるで――」と言い残して煙のように消える、そんなイメージです。

このエンディングでは、**自分の「消える消える詐欺」を皮肉りつつ、本当に魔法のように姿を消すフリをしてみせる**という、非常に凝った自己演出で幕を下ろしています。ファンに「引退か?」と思わせつつ「そんなわけないだろ、騙されたな?」というメッセージでもあり、曲全体の**トリック(手品)のテーマ**を締めくくる巧妙な結びです。

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以上、エミネム「Houdini」の全歌詞と各行の意味解説でした。曲中には過去の楽曲への言及や、社会・文化的な皮肉、そして多重の言葉遊びが散りばめられており、スリム・シェイディとしてのエミネムが存分に暴れ回っています。魔術師フーディーニの名に違わず、リリックの中で巧みに姿を現したり消したりするようなトリックが仕掛けられており、英語表現としても非常に高度です。それぞれのフレーズに込められたニュアンスを理解すると、エミネムのユーモアと批評精神、そしてライム技術の凄さが改めて感じられるでしょう。

参考文献・出典:**